前回は、「2010年診療報酬改定のポイント5」についてお話ししました。今回は「胃瘻患者等の狭まる行き場について」をお話ししたいと思います。
はじめに、近年、胃瘻※1などの「医療的ケア」が必要な高齢者が、行き場に困るケースが起きています。療養病床※2の見直しが大きな原因です。特別養護老人ホームをはじめとする「受け皿」での医療体制の不備や、胃瘻が過剰に行なわれている問題も指摘されています。
※1胃瘻
脳の障害や食思不振などで、食べ物を飲み込む力が衰えた人の胃に穴を開け、管を通して必要な栄養や水分、薬剤を投与する事。かつては外科手術で行なわれていたが、米国で1979年、小児患者向けに内視鏡を使った手術を実施。米国内で普及し、日本などにも広がった。オランダやデンマークなどでは、高齢者に対してほとんど行なわれていないとされる。
※2療養病床
長期療養が必要な患者向けの施設。医療保険適用の「医療療養病床」と、介護保険適用の「介護療養病床」がある。国は2006年、介護療養病床を2011年度末までに廃止し、医療療養病床を15万床(後に22万床に変更)にする再編計画を決定。政権が変わり、削減計画は凍結、介護療養病床の廃止も実態調査のうえ必要に応じて見直すことになった。
よくあるケースの例ですが、分かりやすくイメージしやすいと思いますので、下記に紹介してみたいと思います。父親(80)は、脳出血で10年以上前に特別養護老人ホームに入所。3年ほど前から食べ物が飲み込みづらくなり、急激にやせた。昨春、誤って気管に食べ物が入り、肺炎となって一時入院した際、胃瘻の手術を勧められた。「うまく栄養が取れ、元気を取り戻せれるのでは」。家人は手術に同意したが、入所していた特別養護老人ホームからは「医療処置を必要とする胃瘻の人をこれ以上受け入れられない」と退所を迫られた。入院先から、ようやく見つけた老人保健施設に移った。家人は、体重が増え、表情も明るくなった父親(80)の回復ぶりを喜びつつも、「ここでも退所を促されるのでは」と気が気でない。別の特別養護老人ホームに入所を申し込んだが、「胃瘻の受け入れ枠はなかなか空かない」と言われた。家人は「終の棲み処であるはずの特別養護老人ホームが『医療処置が必要になったら、もうみられない』というのはおかしい」と憤る。
介護に加え、胃瘻などの医療的ケアが必要な人が居場所に困る最大の理由は、こうした人を多く受けていた医療療養病床が受け入れを抑制していることだと思われます。国は2006年、同病床に、病名や医療処置の回数などにより患者を「医療区分1~3」に分ける仕組みを導入しました。医療の必要性が低いとされる「区分1」には、胃瘻の患者などが含まれるが、その診療報酬(入院基本料)は大幅に下げられ、「赤字必至」の水準になりました。「この報酬では、区分1の人の入院はなるべく減らさざるを得ない」と医療療養病床を持つ某病院長は打ち明けています。医療療養病床の区分1の患者の割合は、2005年度の平均約5割から2008年度には3割に減少しました。その分、特別養護老人ホームや老人保健施設では、区分1に該当する人の入所希望が増加しています。しかし、胃瘻の処置は「医療行為」のため、原則介護職は行なえず、看護師が少ない特別養護老人ホームなどで多く受け入れるのは難しい状況となっています。
前回は、「2010年度診療報酬改定のポイント3」についてお話ししました。今回も引き続き、「2010年度診療報酬改定のポイント4」についてお話ししたいと思います。
調剤報酬でのポイント
調剤基本料が小変更されました。1月の処方せん受付回数が4,000回、特定保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が70%を超える薬局の調剤基本料が18点から24点に引き上げられました。また、休日・夜間などに対応している薬局が周辺に少なく、その結果一つの薬局に処方せんが集中してしまう場合もあります。その点を配慮して具体的には処方せん受付回数から、時間外加算、休日加算、深夜加算、夜間休日等加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料等の加算に係る処方せんを除くことにしました。これにより、大型の1医療機関からの集中率が70%を超えてしまっている調剤薬局でも、夜間休日の対応を充実させることで、40点の算定を可能に出来る場合もあるかもしれません。
一包化薬調剤料は、「一包化加算」と名称を変更し、内服薬調剤料の加算となりました。また、内服薬調剤料は15日分以上で点数が増えています。特に従来は22日以上の評価は一律でしたが、31日分以上を新設して89点を付けました。湯薬も一律190点の評価だったものを、投薬日数に応じた評価に変更しました。
その他、入院患者の外来・在宅医療へのシフトが進む中で、薬局で調剤する医薬品にもハイリスク薬が増えており、これらの取り扱いを評価する加算を新設しました。薬剤服用歴管理指導料のなかに、特に安全管理が必要な医薬品を調剤し、服薬に関して服用状況、副作用の有無等について患者に確認し、薬学的管理及び指導を行った時に4点が加算されます。安全管理が必要な医薬品とは、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、カリウム製剤(注射剤)、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤及び抗HIV薬です。
急性期医療機関の機能を他の施設にシフトさせるという、最近の診療報酬改定における一連の流れは、調剤報酬改定の内容にも反映されており、今まで見てきたように、ハイリスク薬を処方される患者の増加への対応や夜間・休日、在宅医療に対応する薬局への集中率上昇への調剤報酬上の配慮が見られます。
後発医薬品の使用促進策について
政府は2012年度に後発医薬品の数量シェア30%を目指しており、そのための使用促進策を講じています。2010年度改定では、特に調剤薬局向けのインセンティブとして、後発医薬品調剤体制加算を従来の4点から大幅に引き上げました。ただし、算定要件が変更になっており、従来は処方せん受付回数の内、後発医薬品を調剤した処方せんの受付回数の割合が30%以上であれば算定出来ていたものが、改定後は、医薬品の調剤数量のうち、後発医薬品の調剤数量の割合が、20%以上であれば1回につき6点、25%以上であれば13点、30%以上であれば17点となっています。
入院医療機関への後発医薬品処方促進策も用意されています。入院医療機関で後発医薬品の採用品目数が全採用医薬品の20%以上である場合に「後発医薬品使用体制加算」を入院初日に30点算定できます。
前回は、「2010年度診療報酬改定のポイント2」についてお話ししました。今回も引き続き、「2010年度診療報酬改定のポイント3」についてお話ししたいと思います。
外来/在宅医療の充実を目指す項目
2010年度改定では、「再診料」が病院、診療所間で69点に統一されました。病院にとっては9点のプラス、診療所にとっては2点のマイナスとなります。一方で「外来管理加算」の算定要件は5分以上の診療が必要とされたいわゆる5分ルールは撤廃されました。再診料が引き下げになった代わりに「地域医療貢献加算」が新設されました。これは休日・夜間に患者からの問い合わせや受診等に対応可能な体制を確保している場合は再診料に3店加算できる仕組みです。病院勤務医と開業医の待遇面等の格差是正のために診療所の負担を増やそうとしています。在宅医療の充実も図られます。従来、病院中心であった連携パスの点数評価が、診療所や200床未満の病院にも適用になります。「地域連携診療計画退院時指導料2」が新設され、地域連携パス導入医療機関(「地域連携診療計画退院時指導料1」算定医療機関)の患者の退院後の外来医療を提供した場合の算定ができるようになりました。在宅療養支援病院の算定要件が緩和され、200床未満の病院で、在宅療養の体制が整っていれば、周囲4キロに医療機関が存在していても良くなりました。往診料の引き上げも実施し、特に患者が乳幼児の場合の加算も新設しました。在宅医療は、病院入院患者の早期退院を促す効果が期待されており、入院医療の再建を水面下で支える役割を担っています。そのため、財源が乏しい中でも点数が増加される項目も多く、充実が図られているのです。
充実が求められる領域でのポイント
がん、認知症、肝炎などの分野に関しても充実を図っています。特にがん医療に関しては在宅や外来医療へのシフトを鮮明にしています。また、「がん治療連携計画策定料」と「がん治療連携指導料」が新設されました。これらはそれぞれ、入院医療を担う医療機関と、退院後を担う医療機関で算定できるもので、地域連携診療計画を策定し、それぞれが連携して医療を提供した場合に算定できます。連携推進により退院後に受けられる医療水準を高いレベルで担保し、安心して外来でのがん治療を受けられるようにしています。また、介護老人福祉施設入所者への外来化学療法の抗悪性腫瘍剤と注射剤の算定を可能にし、外来でがん治療を受けられる患者のすそ野を広げました。高齢化の進展で増加している認知症に関しては、早期発見やかかりつけ医による外来医療の充実を図る方向となっています。この方針に基づき、外来では、「認知症専門診断管理料」、「認知症専門医療機関連携加算」が新設されました。これは、前者は専門医療機関で認知症の鑑別診断を行い、療養方針を決定、患者に説明した場合に算定できます。後者は、外来で管理している認知症患者を必要に応じて専門医療機関に紹介した際に算定できます。
入院医療機関では「認知症治療病棟退院調整加算」が新設されました。これは文字通り、患者の退院支援計画策定とそれに基づき退院が出来た場合に算定できます。また、従来の「認知症病棟入院料」を「認知症治療病棟入院料」に名称を改め、従来90日以内と91日以上で点数が異なっていたものを、60日以内と61日以上と、境界となる日数を短くした上で点数を増やしました。
肝炎治療に関しては、副作用への不安などから治療途中での離脱する患者が少なくないことから、「肝炎インターフェロン治療計画料」を新設しました。これは肝炎治療の専門医療機関においてインターフェロン治療計画を策定し、副作用を含め説明を行った場合に算定できます。
前回は、「2010年度診療報酬改定のポイント1」についてお話ししました。今回も引き続き、「2010年度診療報酬改定のポイント2」についてお話ししたいと思います。
医療再建/病院勤務医の負担軽減を目指した項目
2010年度の診療報酬改定では、救急医療や産科・小児・外科等のいわゆる「医療崩壊」が指摘されている分野に重点的に点数を配分し、医療の再建を目指しています。2010年度は救急医療の再建のために、緊急入院した患者が5日以内に退院した場合に算定できる加算「救急搬送患者地域連携紹介加算(退院時1回)/「救急搬送患者地域連携受入加算(入院初日)」を新設しました。また、退院後の受入先を確保する意味もあり「救急・在宅等支援療養病床初期加算(14日以内、1日につき)」を新設しました。これは急性期医療を担う病院の一般病床からの患者の受入や、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、自宅からの患者を受入れた場合に療養病床で算定できるものです。救急医療の問題点の一つに、救急医療機関のキャパシティが取り上げられています。空きベッドがないなどを理由に緊急搬送を受け入れられないケースが少なくないのです。それを解消するために、救急医療機関には早期退院を促す診療報酬を新設、退院後の患者の行き先を確保するために療養病床に対しては受入を促す診療報酬を新設したのです。また、療養病床が自宅や福祉施設などからの患者を受け入れた際にも評価されるようにしていますが、容態が比較的安定している患者は療養病床が受け入れる事で、急性期病床が急性期患者への医療提供に専念できる体制を整えようとしているのです。
新生児医療でも、NICU(新生児集中治療室)満床時の緊急受け入れの際、2床までなら入院定員を超過できるよう要件を緩和しています。産科救急医療においては、母体だけでなく子の命も同時に救わねばならないケースも多く、母体と新生児両方同時に受け入れる必要があるのです。NICUの定員要件の緩和は、このようなケースには効果的な措置となるでしょう。その他、救命救急入院料や特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料など救急関連の診療報酬の引き上げ、算定要件緩和、新生児・小児患者受入時の加算の新設など、救急・産科・小児科医療の充実を図っています。
外来医療においては、中核病院の夜間・休日診療の負担を削減すべく、地域の開業医と連携し、救急患者を夜間・休日に受け入れる体制を整えている医療機関を評価する「地域連携夜間・休日診療料」を新設しました。これにより、特定の医療機関への集中が避けられると期待されます。また、院内で重症患者と軽症患者の色分けを行う「院内トリアージ加算」を新設し、医療機関内で患者の容体に応じた優先順位付けと重症患者が適切な医療を受けられる仕組みの構築を目指します。
2010年度改定では、チーム医療への評価も新設されました。「栄養サポートチーム加算」と呼吸ケアチーム加算」です。「栄養サポートチーム加算」は以前から要請が強かったNST(栄養サポートチーム)への評価であり、常勤の医師、看護師、薬剤師、管理栄養士がチームとして組織されチーム医療を実施した場合に評価されます。「呼吸ケアチーム」は医師、看護師、臨床工学技士、理学療法士がチームとなって人工呼吸器を装着している患者へ、人工呼吸器離脱のための診療を行った場合に評価されます。
12月29日〜翌年1月4日まで、年末年始の休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが,ご了承下さい。

