前回は、「身体拘束について8」お話ししました。今回は「2010年度診療報酬改定のポイント1」についてお話ししたいと思います。

改定率について

2010年度診療報酬改定率は、全体が0.19%プラスと、10年ぶりのプラス改定になりました。およそ5700億円プラスです。内訳は医科が1,74%、歯科2,09%、調剤0,52%、薬価改定率-1,36%となっています。医科診療報酬の増加率はされに細分化され、入院医療は3,03%、外来医療は0,31%の増加となっています。金額としては、入院医療に4,400億円、外来医療に400億円が投下されることになります。ただし、これらとは別に長期収載品の薬価追加引き下げが2,2%(約600億円相当)あります。今回の改定は全体ではプラスと言われていますが、調剤報酬の増加幅が他に比べ少ないですし、薬価の引き下げ(薬価ベースで-5,75%に加えて長期収載品の-2,2%)もあり、調剤薬局にとっては厳しい改定かもしれません。

改定の全体像

今回の診療報酬改定の重点課題は「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」、「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」の2点となっています。特に「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」では、単に急性期の医療機関を充実させるだけでなく、療養病床、有床診療所、在宅医療など急性期を支援する後方の医療機関の機能強化を進める事にしています。これら重点課題の解決も含め、診療報酬改定は次の4つの視点で検討されてきました。4つの視点というのは、「充実が求められる領域を適切に評価していく視点」、「患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点」、「医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点」、「効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点」です。これらの視点は、従来と大きく変わるものではなく、要するに、医療サービスの質は落とさずに、無駄を削って、その分を必要なところに回すメリハリのきいた改定にするという事です。
今回の改定内容の詳細はこの後ご説明いたしますが、全体を通して見ると、2010年度改定では、急性期以降の医療を充実させる事に焦点が当てられています。療養病床や有床診療所の機能を強化し、急性期を脱した患者を早期に受け入れる仕組みを作ったり、連携パスでの評価対象を在宅医療にも拡大したり、医療崩壊が叫ばれる急性期医療を背後から支援しようとしています。近年の診療報酬改定のトピックを時系列に並べて見てみると、面白い事が分かります。2006年度改定で「在宅療養支援診療所」が登場、療養病床の入院患者を重症度等によって区分し、それぞれに応じた評価をする仕組みを導入しました。これはいわゆる社会的入院患者を削減しようという狙いがありました。重症度が低い社会的入院患者を入院させても低い点数しかつかない仕組みにして、退院を促し、彼らの受け皿として在宅療養支援病院を用意しました。これにより療養病床の役割を軽減し、その分診療所に業務負担をシフトさせたのです。2008年度は夜間・休日診療を行う診療所の評価を高める一方で「外来管理加算」に対していわゆる5分ルールを適用しました。これにより従来通りの診療を行う診療所の収入は減少しても、夜間・休日診療などを行うことで、減収分を補填できるような仕組みを目指しました。病院の悩みの一つが夜間・休日の初期救急の多さであり、軽症患者の受診の対応で医師の負担が増加、医療機関側の受け入れも限界に来ていたからです。これを解消するために開業医に軽症患者の夜間・休日対応を担わせようとしているのです。そして2010年度診療報酬改定での注目は、療養病床の機能強化です。すでに社会的入院患者の在宅での受け入れ態勢は整備されており、急性期からの患者を受け入れる土壌は作られておりいよいよ療養病床自体の機能強化を図る段階となったようです。その他の改定項目も急性期病院が担ってきた医療の内容を他の施設にシフトさせる項目が目立っており、病院数・病床数を増やさずに急性期医療の崩壊を防ごうとする姿勢が見受けられます。